福祉事務所に勤めるアネリ(アネ=リーネ・スヴェンスン)は、みすみす不正受給だと判りながら、あれこれと理由をつける担当の女たちに我慢ならなかった。
義務の職業訓練も受けず、紹介した職場にも不満を言って勤めず、男のところで同棲しながら厚かましく住宅補助を持っていく。
アネリは定期的な面談のたびに積もるストレスに耐えて来た。
検診で癌までが見つかった。将来を棒に振っても、生意気な怠け者たちを始末しなくてはならない。アネリは運命の道連れにしようと周到に計画を立てて準備する。
まず一番の的は不正給付を受けることを恥だと思わない、自堕落な怠け者の三人組だ。
一度目の狙いは未遂に終わるが、それでも次々にリストにあげた受給者を殺していく。
最初のリストに載った女たち(デニス、ミッシェル、ジャスミン)は、福祉事務者で知り合った。
三人は死んだデニスの祖母のアパートに入り込んで同居を始めた。
デニスは死んだ祖父の拳銃とナイフを見つけて、クラブを襲う計画を立てる。
成功して大金を得るが、ミッシェルが逃げ出し、狙っていたアネリに殺される。
この長い話には、三人の女が殺されていく様子がアネリの行動の描写でわかる。
彼女は担当している男に好条件を餌にしてしリボルバーを手に入れ。それに細工をしてサイレンサーに変える。
アネリがロトにあたったという噂を信じて強盗目的で訪ねて来たデニスを殺し、命拾いをする。
帰らないデニスを待っていたジャスミンは金を詰めたバッグを持って逃げだす。
入院していたローセが精神状態がまだ最悪にもかかわらず退院して行方が分からなくなった、特捜部Qのメンバーは 手を尽くし探しあぐねていた。
手にいれたローセのノートには、意味不明な心の悲鳴が呪いのような言葉で書き綴られていた。
ローセの部屋にたどり着き彼女の遺書を見つける。臓器提供の申請書まであった。献体を申請した本人が行方不明ということがあるだろうか、二人は腑に落ちない。
カールとアサドはローセを探す。ローセを愛するゴードンは細身の体がますますやせ細っていく。
ローセは偶然、殺されたデニスの祖母の隣の部屋に住んでいた。誰もいないはずの隣の部屋から話声がする。ローセは不審に思った。
ドアがノックされドアを開けたロースはデニスとジャスミンに捕まった。バスルームの椅子に縛られ時々水を与えられるだけで、時々目覚めて女たちの会話を聞いた。
アネリは金目当てにたずねて来たデニスを射殺したあと、逃げ出したジャスミンを待ち伏せし背に向かって車をスタートさせた。アネリは正義に酔っていた。
アネリはデニスの死体を載せたまま交差点で男の子が運転する黒いゴルフに突っ込んだ。ゴルフのボンネットにデニスの死体が乗っているのが見えた。
未解決事件と似ているという情報をくれたかつての課長からのヒントで、デニスの祖母の撲殺事件が解決した。
アネリが逃げようとするところをアサドと二人で逮捕した。アネリの起こした連続殺人事件も幕を閉じた。
集中治療室にいるローセはまだ回復しないが、彼女が苦しん来た根の深い原因が解明した。分裂した人格を取り戻すには時間がかかるかもしれないが、幸い彼女は命を取り留めた。
反目しあっていた捜査課長のビャアンともわずかに細い糸がつながった気がする。
今回は犯人や被害者の背景になっている人々の過去と現在が長かった。
時間にするとデニスの父親と祖父の戦争体験から、ローセのトラウマになった父親が、圧延工場でローセの眼前で圧死する、その上父親の言葉での虐待は死ぬまで続いていた。そして現在彼女はまだ苦しんでいる。
複雑に絡んだそれぞれの不幸な生き方が追い詰められていく様子など、ファンでなければ読むのがつらいかもしれない。
作者は国家特有の歪みをあぶりだしながら、制度を悪用して犯罪だとも思わない人々がいることを、怒り(粛清すると思っている)のためには手段を粗ばない独りの女の心理とともに描き出す。
遠い出来事になったような戦争の傷跡がまだ癒えていない人達までも登場させて、社会への関心が一段と深まった作品になっている。
手の付けられないほど人格の崩れた女たち。「自撮り」は現在のあるがままな自分に満足している女たちの自画像かもしれない。