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空の名前



高橋健司

秋の雲がみえた。うろこ雲、まだちいさい羊雲。名残惜しそうな夏雲も少し残っている。
下を見ると野にヒガンバナが美しい季節になった。

2004年の発行。たまたま主治医の先生と雑談をしていたら「これいい本ですよ」と言って
貸してくれた。少し読んですぐに買うことにした。
それ以来手元にあって、四角に開いた部屋の窓から空を見ては”雲模様”を観察している。

季節ごとの自然の様々な現象が見出しになって、そこに美しい日本語と、見出しにちなんだ
俳句や短歌が添えてある。

筆者は写真家協会員で美しい写真もあり、それを見るだけでも気持ちが広がってくる。
今年こそ雲を撮ろうと思いながら、長年のクセで俯いて草花ばかりを撮っているが。

四季に恵まれた国に住んで、古代から農業も含め生活の指針を自然に求めていた証は多くの
言葉にあることを知った。
名前はそのものの命だと思えば、読み返すごとに豊かな気持ちになる。
索引は500をゆうに越えていて素晴らしい写真とともに紹介されている。

目次

序章 気象学による雲の分類法
     雲の類 
 巻雲、巻積雲、巻層雲、高積雲、高層雲、乱層雲、層積雲、層雲、積雲、
       積乱雲 毛状雲、鉤状雲、濃密雲、塔状雲、状雲、層状雲、霧状雲、テンズ雲、          断片雲、扁平雲、並雲、雄大雲、無毛くも、
       多毛雲。

雲の変種   肋骨雲、波状雲、もつれ雲、放射状雲、蜂の巣状雲、半透明雲、二重雲、
       隙間雲、不透明雲。
雲の副変種  鉄床雲、乳房雲、尾流雲、降水雲、アーチ雲、漏斗雲、頭巾雲、ちぎれ雲。

1.雲の章
      羊雲 羊が牧場で群れているように見える雲で、高積雲の一種です。
      この雲が太陽や月を横切ると、美しい光冠が見えることがあります、
西洋ではこれを黄金の羊、神の使いの羊と呼ぶそうです

      ほかに 鰯雲、鱗雲、むら雲、朧雲、入道雲、雲の峰、飛行機雲、雲の根、
      凍て雲など。

2.水の章
     小糠雨 春先にしとしとと降る雨で、雨粒の大きさは0.2~0.5ミリと小さく
いわゆる霧雨です。糠雨とも言いますが、傘をさすほどの雨ではありません。
ひそか雨の名もあります。

      よもすがら音なき雨や種俵(蕪村)

     ほかに 驟雨、春時雨、菜種梅雨、卯の花腐し、五月雨、篠着く雨、海霧 など

3.氷の章
     風花 冬型の気圧配置で日本海側に雪が降っているとき、脊梁山脈を越えた
     空っ風に乗ってきらきら光りながら雪片が舞い降りてきます。これが風花で            群馬県では吹越といいます。雪と言うには余りにも量が少なく、地面に舞い
     降りるとたちまち乾いてしまいます。

        ほかに、氷の花、御神渡り、霜道、忘れ霜、霜華、など

4.光の章
      天使の梯子 「ヤコブが、イザヤから祝福を受けてイスラエルの地に旅した時、
      ある土地で石を枕に寝ていると、天に通じる階段が出来て天使が上がったり
      下がったりしているのを夢に見た。ヤコブはここが天の門の地と知り、
      神に祈ってここにイスラエルの国を作った。
(旧訳聖書 創世記代28章)雲に切れ間から射し込む、行く筋もの神々しい光は
      あたかも天と地を行き交う階段のように見えます。
そこでヨーロッパではこれを天使の梯子、ヤコブの梯子などと言っています。

      ほかに 彩雲、幻日、光冠、虹、蜃気楼、オーロラ、白夜、などなど
 
    
5.風の章
     青嵐 青々とした草木や、野原の上を吹き渡っていく風で、嵐の文字を用いる
     ことから解るように、薫風よりも幾分強い風を言います。

長雨のそら吹き出せ青嵐(素堂)

      ほかに 春一番、比良の八荒、風光る、春疾風、山背、野分、木枯、颪、 
      鎌鼬、風の色、 など

6.季節の章
      光の春 立春を過ぎてもまだ余寒が厳しく、寒い日があります。
      けれども陽の光は日増しに強くなってきて、寒い中にも張るの訪れを 感じる
      ことがあります。これが光の春です。光の春と言う言葉は、もともとはソ連で
      使われていた言葉で、緯度の高い国に住む人々の、春を待ちわびる気持ちが
      伝わってくるような響きがあります。

      余寒、麦秋、油照り、老婦人の夏、インディアン・サマー、二十四節気、
      白露、半夏生、など 

参考文献・索引・あとがき


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