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絵のない絵本



アンデルセン

本選びで時々失敗をする。アンデルセンの童話なのですが、なんだか暗い話が多く、序でに暗い感想を残します。

雑談は大変役に立つ(ことが多い)もので、特に本読みが集まると意外な発見があってやめられません、結構な薀蓄が披露され勉強にもなります。

そこで本の題名のあれこれが話題になりました。不思議な題名や見事な題名やありきたりの魅力がない題名という話で、なかなか辛辣な意見が出ていました。
そこでひそかに「絵のない絵本」と、中身は読んでなくてもどこかで見た「醒めてみる夢」が浮かんでいました。「醒めてみる夢」はとっさに浮かんだだけなのでそれが何だったか思い出せず、後になってやっぱりいい加減なことを言わなくてよかったという気がしましたが。
帰って「絵のない絵本」の意味を解決してみるかなと、先立つ雑用をさておき探してみたのですが。

この薄い本はなかなか手ごわかったです。取り掛かったのはいいのですが訳を読みこなすのにもう苦心惨憺で、二度読んで、もう意地になって三度読んでも馴染めなかったのです。

これが理数系本や哲学書ならぽつぽつと文字を読んでいって結果よくわからなかったというのも納得なのですが、アンデルセンさん相手なので、もう読むのをやめて、お口直しに読みかけの妖しい愉快本、有栖川さんにしようかと思ったくらいです。

アンデルセン童話は子供の頃おじいちゃんの膝の中で読んでもらった記憶があります。
話ではおじいちゃんは三才の時亡くなったそうなので半分以上は思い出の創作映像のようです。
童話もほとんど、覚えているものは勝手にカスタマイズされてしまっています。それでも見聞きする機会が多いので有名どころはなんとなく知っているのですが、これが改めて子供に話すとなるといまだに私の記憶はまことに怪しく、グリムかアンデルセンか、イソップまでかき混ぜられてしまっています。
でもよくしたもので、本屋さんに行けば「アンデルセン童話集」がたくさん並んでいます。昔の話で在庫があるところを見ると子供が勝手に読んだようですが、

で、本題は「絵のない絵本」ですが、これを読むのは初めてだったのに、ちょっと気合いが足りませんでした。
一言でいえば、アンデルセンさんの、脳内幻想という形で、世界各国を歩いた風景を元にして、童話が編まれているのです。
絵描きさんに月が語りかける、という形で、一夜から三十三夜まであります。
これは当時の日常風景でしょうが、月の光に照らされた風景というだけでもう世界は幻想的でその上、今と違って人々にとって世界は宇宙のように広かった時代、こんな異郷の物語はとても興味深かったことでしょう。お話も、やや子供向けというのは疑問があっても、喜びや悲しみがこもったお話はやはりアンデルセンさんの童話でした。ここに不満はなかったのです。

ところが事をややこしくしていて、意味不明な感じの元凶は訳でした、訳者の方にいうことではないようですが、昭和25年の初版で、当時の言葉がそのまま使われていることで、言葉がこれほど変化していることに驚きました。

わずかな間のようですが、馴染みがなくなっている言葉は、ストーリーに沿って現代語に置き換えて読まないと入りにくかったです。
これは近代文学を読むのとはまた違った経験でした。

童話を楽しむというよりは、なぜわかりにくいのかということを考えました。そんな気分で読んでいると、拘りの一語を考えている間に連想が様々に拡散して、お話に戻りにくく時間がかかってしまいます。
例えば
「花の吐息はくんくんとにおい」
くんくんは薫々でしょうか。そこで立ち止まると、つい薫大将を思い出したり、写真で見た北村薫さんの顔が浮かんできます。こういう珍しい経験をしながら三度目にやっとまあいいか状態で読み終えて、付録のアンデルセンの生涯に進みました。

このもやもやを何とかしようと思って図書館を歩いてみました。そこでぴったりくる福音館で最近出版された「絵のない絵本」を見つけました。
一読して、これだと思い、アンデルセンはこうして読みたかったのだとなんだか胸のつかえが下りました。

ついでに童話集を借りてきて、読み直しています。


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