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藁の楯



木内一裕

少女を残虐に殺し犯して捨てた犯人が出所してきた。間もなくまた一人の少女を犯して殺した。だがその子は富豪の孫だった。

富豪は三大紙に全面広告を出す。

<この男を殺してください>

黒々としたバカでかい文字が踊っていた。
その下に大きな顔写真とさらに

<御礼として十億円お支払いします>

<蜷川隆興>という署名とWebサイトのアドレス、携帯サイトのアドレス、フリーダイアルの電話番号。

身の危険を感じて、清丸が福岡県警に名乗り出た。
福岡署は検察庁まで送致しないといけない。

警護課から銘刈と白石が、捜査本部から奥村と神箸、福岡県警捜査一課の関谷を加えた五人が東京まで警護する。

しかし年のわりに幼い顔をした清丸は罪の意識がまるでなく、開き直って横柄なふてぶてしい態度だった。
既に三度襲われ、殺されかけて傷を負っていた。殺せば十億円、彼が札束に見えてもおかしくない。
移送手段を選ばなければならない。
航空会社には断られた。ヘリは狙われる。
350人体制を組んだ県警の移送部隊に守られて、4WDの大型車に乗せた。だが反対車線はわき見車両で大渋滞、清丸の命を狙った車は突っ込んでくるはで、これ以上高速道路を使うのは無理だとわかった。
山口で新幹線に乗り換える。多目的室に清丸を閉じ込めて見張ることにする。

しかし銘刈は、安心できない。
清丸を狙うのは誰でもできる、特に銃を持った警察官、隙間なく取り囲んでいる警ら部隊、そして身近にいる警護の5人も心から信用はできない。

予想通り、様々な形で清丸が狙われ、ついに殉職者がでる。
この生き残りゲームは、犯人の残忍さと10億円の重みで人々が沸き立つ話。
世間からは警護する銘刈までが非難されることになる。

命と国費までかけて移送するのはなぜか。10億円は誰の手に入るのか。そういう類の本だった。

移送の行程は、緊張感がある。銘刈とどこまでも平然とした清丸はどうなるのか。
乗りやすい、読みやすい。
小説としてどうかよりも、場面の進行に乗って読んでしまう。


お気に入り度:★★★☆☆
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