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赫眼



三津田信三

刀城言耶が謎を解く作品が面白いので、三津田さんの初期の短編を読んでみた。

ホラーはどうしてもよみたいとは思わないが、嫌いでもない。三津田さんの刀城言耶シリーズは、本格ミステリの背後に風習や土俗的な匂いを絡ませてとても面白い出来になっている。
興味もあって、検索した中から「赫眼」を読んでみた。

短編8編が入っていたが、短いためか、軽い怪談噺のような印象だった。

表題の「赫眼」
転校生の女の子は色白で美しさで群を抜いていた。左目の虹彩の色が濃く妖しい魅力があった。僕はそれを少し奇異に感じたが。毎日同じ服で通学し汚れたズックをそのまま履き、なにか周りと違った雰囲気を漂わせていた。僕は偶然隣の席になり、彼女が休んだ日に、プリントや給食を届けることになった。行ってみると荒れた小屋で、中には何か黒い不気味なものが潜んでいるような気がした。
次に行ったときは勇気を出してその黒いものの正体を見たいと思う。そしてそれは…。

どの作品もこういう恐怖を誘う道具立てに、得体のしれない人物が、じわじわと異常な現象を引き起こし、怪異を表す。

ゾッとした。背筋がゾワッとした。ひやりとした空気、不意につかまれた。など、言葉もホラーじみた擬音にミステリを混ぜた構成で、さあ恐怖はこれからという感じに引き込む。
それがどうも怖くない。

「怪奇写真作家」

「見下ろす家」
崖の上から空き家に常に見下ろされているように感じていた、友人たちと忍び込んでみると。

「夜中の電話」
いつかみんなで行ったコンクリートで固められたたった一つ部屋のある家、誰も入れないはずなのに、そこからの電話。

「灰蛾男の恐怖」
怪人に出会った話。

「後ろ小路の町屋」
異次元に迷いこんでしまった。

「合わせ鏡の地獄」
題材としては目新しくないが三津田さんの語りが面白い。

「死をもって貴しと為す」
死相学探偵登場。

様々な作品との関連や、読んだことがある作家を思い出すような作風など思い当たる面白いテイストがブレンドされてはいるが、残念ながら話の広がる前に締めくくられて、薄味になっている。
問題の「赫眼」も冒頭において眼を惹くが、期待したほどではなかった。

作品が売れてからの短編集は、編集者が選んで過去のものを出したのか、作者にとって捨てがたいものなのか、たいてい未完成感があって、買ってきたのを後悔することがある。


お気に入り度:★★★☆☆
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