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21g

21g 映画

21g

「21g」 (2003年 米)

監督:アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ
脚本:ギジェルモ・アリアガ
製作総指揮:テッドホープ
撮影:ロドリゴ・プリエト
出演:ショーン・ペン(ポール) ナオミ・ワッツ(クリスティーナ) ベニチオ・デル・トロ(ジヤック) シャルロット・ゲンズプール(メアリー)


人が死ぬと21gだけ軽くなるというそれは何の重さなのか。
「ハチドリの重さ・・100円ライターの重さ・・キヤラメル3個の重さ・・5セント硬貨5枚の重さ・・一握りの貝殻の重さ・・ポケットティッシュの重さ・・ジェリービーンズ26粒の重さ・・
クリップ44個の重さ・・空になったマニキュア瓶の重さ・・。」
と死を前にしたポールが呟く。
全く生活階層の違う三人の人たちがどんな風に知り合いそれぞれの人生がどんな風に交差していったか。

「21g」とはベッドに横たわってチューブにつながれているポールの呟き。

ポールは移植以外助かる方法の無い重い心臓病でドナーを待っている。
ポールは数学教授。そこに事故の知らせがあって脳死状態にある人から心臓が提供されるというニュースがくる。
クリスティーナは優しい夫と二人の娘を持つ幸せな主婦だった、過去のドラッグ中毒からも立ち直っている。
娘たちと出かけた夫からすぐ帰ると携帯電話にメッセージが入り背後に娘たちがはしゃぐ声がする。その後すぐに三人はトラックにはねられた。
クリスティーナは録音された声を何度も繰り返し聞いている。
失ったものを埋めるためにまたドラッグを始めるようにもなる。
事故後、夫の心臓を移植されたというポールが現れたが怒りと悲しみに襲われ、ポールを認めることが出来ない。
前科のあるジャックはくじで当たったトラックも神の思し召しと思い、
立ち直るために宗教にすがって、それにのめり込んでいる。
妻と二人の娘を養うために必死で働いていて交通事故を起こす。
ポールはドナーの名前をどうしても知りたくなり、調査員を雇ってクリスティーナに行き着く。クリスティーナを見続ける日々が続き次第に心を惹かれていく。 
ポールの結婚生活はすでに破綻している。
別居中の妻が過去に妊娠中絶をしたことで二人は深く傷ついている、しかし妻のメアリーは未来の無い夫であっても彼 の子供を得ることを熱望して協力を求めている。

ポールは次第に移植による拒否反応に悩まされるようになる。
ジャックは事故の後、一旦は逃げたのだが妻の懇願も無視して、自己の宗教心から警察に名乗り出る。
しかし事故の痕跡は生活を思う妻が消してしまっており、トラックも売り捌いていて証拠不十分で帰ってくる。
いつか心の通いあったポールにクリスティーナは「ジャックが殺したいほど憎い」と言い、共感したポールはジャックを探す。
ポールとジャックが出会った時からジャックの宗教心とポールの人間的な苦しみがより深まる、クリスティーナの憎悪の行く先は三人の真に生きることに対する深い悲しみとともに幕を閉じる。
冒頭からばらばら細切れになったシーンが続く、それぞれのシーンで俳優たちがそれぞれの人物をありのままに深く印象付ける。カメラは手持ち撮影が多く現実感の深い映像になっている。
楽しみのために見る映像では俳優は美しく輝いているが、この映画では生のままで飾らない、そんなリアルな存在でストーリーの中に生きていて感動する。
ショーンペンは冷静で、鋭く暖かくそして優しい、ナオミ・ワッツは美しく脆く悲しい。存在感のあるジャックを演じるベニチオ・デル・トロは(ちょっと古谷一行の目を大きくした感じに似ている)、野生的で無口で強く一途である。

時間を無視した実験的な映画ではあるがそれが破綻無く最後に収まり納得が行く。
いい映画を観た。後に尾を引く。日常の悲しさと生きていくことのつらさや悲しみ、死に直面した人のあり方が重い。