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ゴーン・ガール 上



ギリアンフリン

この本は「イヤミス」と呼ばれているらしい。そういえばいや~な感じの言葉満載。放送禁止用語、それも飛びっきりの下品な言葉で埋まっている。上巻だけ読んでいたが、今回下巻まで読了。

ゴーン・ガール(上下)

厭な言葉も読んでいるうちに慣れるとは恐ろしい、そのうちストーリーに気を取られ気にならなくなってくる。

やはり、言いにくい言葉は最初の一言に気をつけて我慢することだ、何事につけても。
言い慣れるとスルリと出るようになる。読書は役に立つ(自戒のひとこと)

上巻の帯「虚栄、裏切り、復讐、憎悪、そして嘘、読んだ後まで、あなたの心は操られ続ける」
下巻の帯「誰もが持っていて、隠しておきたい嫌な感情が、これでもかというほど濃密に描き出される」

このコピーは誰が考えたのだろう、これを読むと気の弱い人は伸ばした手を引っ込めるかもしれない。

私は、もうこのくらいで驚かない、ホラーでもスリラーでも、気の毒な主人公が崖っぷちに追い詰められようと切り刻まれようと、登場するのが、ハンニバルでもドラキュラでも食人種でも、読ませていただきますと、血も涙もないミステリ好きの読書欲には負けてしまって、何でもあり、面白ければいいと開き直る。
というわけで、特別というわけではないが普通には面白かった。一過性の、エンタメミステリだった。

夫ニックはニューヨークでライターをしていたが失業、副業に性格診断クイズを作っていた妻も職を失った。
ニックの母親が病気に、父が認知症になったので、二人はニックの故郷に帰ってくる。
そして結婚5年目の記念日に妻が失踪した。ふっと消えてしまった。
キッチンに大量の血痕があり、部屋は荒らされていた。アリバイが無いニックは警察の取調べを受ける。

妻のエイミーは両親が書いた小説のモデルで、その本は成長記録のように続いて出版され、初版はベストセラーになり、印税で裕福な暮らしをしてきたが、最近は売れ行きもさっぱり、両親は借金がかさんでいる。

二人は会った途端に恋をして結婚したが、今では憎みあうまでになっている。

嫌疑のかかったニックは無実を証明出来ない。妻の日記は無邪気で真実味があふれ、いまだに冷めないニックへの溢れるような愛情が綴られていて、ニックの容疑が深まるばかり。マスコミは、「あの小説のモデルが失踪!!」と騒ぐ。

夫婦が書いたそれぞれ別の日記には、真実ウラの顔が書いてある。妻はまさに虚栄と自己欺瞞に満ちているが、これまた浮気までしていた夫は事件後の心境が悩ましく生々しい。

下巻は

真の恐ろしい迷宮があるとすれば、それは合わせ鏡のようなものだろう。出口のない世界のなかで、ひとつに解け合い映しあう現実と虚像。底深くに映し出されているのは、自分なのか、相手なのか。交錯する視線の中に浮かび上がる真実とは。虚栄心、嫉妬、保身、裏切り、敗北感、復讐心、欺瞞、執着、支配欲、憎悪、そしてそこから生まれる嘘、嘘、嘘・・・・。誰もが持っていて、そして出来れば蓋をして隠しておきたいと思うありとあらゆる嫌な感情がこれでもかというほど濃密に描き出される
これでもかこれでもかというような。

訳者あとがきより

帯とダブル部分があるが、上巻は多少ほほえましい結婚の経緯や暮らしぶりも書かれていて、平坦な日常が進んでいく。下巻で様相が変わり、意外な構成に嵌められる。それもストーリーの何気ない進行がやがて不気味さを見せ始め、緊張感が高まる。ベストセラーになり映画化もされるという、もう少し短く出来るかなと思う部分もあるが、読みやすく、嫌で、嫌味で、今はイヤミスと纏められるようになった事もこの小説の売り文句らしいと感じるくらいだが、慣れるとそれほど気にもならなくなった。

この本は結果にふれるような予備知識があると面白くない。
あとがきも、本編を読んでから読んでください、というほど。

映画化され、ニックはベン・アフレックとか。女優さんは知らない人だ。ただ映画化に際して結末が書き換えられているそうだ。なるほど。

結末は驚かされたが、どんでん返しの佳作に小泉喜美子さんの「弁護側の証人」がある、これは歴史に残る名作だと思ったが、そんな作品は結末を覚えている間再読無理かなと思っている、忘れるのもそんなに長い時間はかからないと思うけれど。


お気に入り度:★★★★☆
掲載日: