恩田陸
恩田陸さんの話題作を読む前に、と思い読んでみた。
読み終わってこれが日本推理作家協会賞受賞作?と少し疑問だったが。登場人物がそれぞれ語るという形式は、真相とどう絡むのかを考えながら読むのは面白かった。
読み終わってこれが日本推理作家協会賞受賞作?と少し疑問だったが。登場人物がそれぞれ語るという形式は、真相とどう絡むのかを考えながら読むのは面白かった。
ミステリのような犯人当てもあるし、ホラーじみた描写もあり、異空間をさまようような雰囲気もあるという面白い構成で。こういう作品は好きだが。
語りには事件の関係者やメインになる人たちの気質の違いが話中にあり、その一部が非現実のようなファンタジックな少し不思議な作風を感じた。
語りには事件の関係者やメインになる人たちの気質の違いが話中にあり、その一部が非現実のようなファンタジックな少し不思議な作風を感じた。
17人の人間が一気に毒殺された背景に犯人と目ぼしい盲目の少女がいるのだが、実行犯は別にいて自殺してしまい、それで解決したことになる。事件に関して常に彼女の心の中の、現実てきでない、不思議な世界が語られる。
一方、街の名士の令嬢だった少女にあこがれて、見守っている少女の話がある。
その少女が大学生になった10年後、事件の傍に居た人たちへのインタビュー記事が本になってベストセラーになるのだが、その本も作者とともに忘れられて行く。
当時関わりのあった刑事は、作者の意図に腑に落ちないところがあって、事件のことを退職後も引きずっているが、この刑事も単に登場人物の一人で警察小説にはなっていない。
そして31年後にやっと話が終わるのだが、それがよく分からない。
動機も犯人もうやむやになったまま終わってしまう。読者はそれぞれの話から自分なりの解決を強いられる。ヒントになる「サルスベリ」「青い部屋」「実行犯の青年とのかかわり」「ユージニア」、などは目の見えない当時の少女の心の風景が多く、現実との齟齬がある、それについて述べられてはいるのだが、結論は一つではないように思える。
中年になり視力が回復して、ついに真実が語られる場面も、一方的で要領を得ない。この曖昧さがなんとも割り切れない。
「ユージニア」については好きな世界だったがあまり成果は無く読後はモヤモヤが残った。
お気に入り度:★★★☆☆
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