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特捜部Q ―檻の中の女―



ユッシ・エーズラ・オールスン

地下の部屋も悪くない。マイペースのカール・マーク警部補は左遷大歓迎。だが助手のアサドはそれでは納まらない。このコンビというか相棒2人、やる時にはやる。

面白かった、特捜部Qシリーズの1作目。
北欧のミステリの中で、ヘニング・マンケルのクルト・ヴァランダー警部が頑張る捜査に従っていたので、スウェーデンの地理が大雑把にわかりかけてきたが、今度はデンマーク。

コペンハーゲン警察のカール・マーク警部補は、捜査中に同僚一人が射殺され一人は脊椎損傷で入院した。
自分も額に傷を負ったが、事件解決の後遺症で無気力状態、すっかりやる気をなくしていた。
今まで彼は抜群の捜査力を持っていたが、殺人捜査からはずされ、地下にある新設の「特捜部Q」を任される。
未解決事件を扱う部署だと、聞こえはいいが、れっきとした左遷で、警察内でも誰知らぬ者はない。
ガラクタの散らばった部屋を与えられて、本人はかえって気楽なところもある。そこにどういう経緯を辿ったのか、助手にアラブ人のアサドが来る。
何かいわくのありそうなアサドだが、飛びぬけた奇人変人振りを別にすれば、几帳面で頭脳的でもあり、役に立つ人物だった。
二人には次第に信頼関係が築かれてくる。
やる気のないカールの前に積み上げられたファイルを見て、アサドが事件を拾い出してくる。

5年前に弟を連れ、ドイツに向かった船から飛び降りて、自殺したといわれている。
ミレーデ・ルンゴー事件。
遺体は発見されていなかったが、海の出来事であったし、おざなりの捜査は打ち切られていた。

彼女は優秀で、その上チャーミングな笑顔で政界では人気者だった。

しかし死んだと処理された時点で、船上にいた彼女は誘拐されていて、隙間の無い厚い壁で囲まれた「与圧室」の格納容器の中に監禁されていたのだ。
一年たって誕生日が来ると気圧が1ずつ上げられ苦痛が増していく。
なぜこんな悲惨な目にあうのか、理解できないままに暗闇の中で耐えるミレーデは、今までの5年間をどうやって生き抜いたのか。

誘拐された2002年からのミレーデの状況と、2007年になって再調査を始めた「Q」の捜査の話が進んでいく。
彼女が生きているという確証はなにも無かった。ただアサドは遺体がない以上捜索は「Q]の仕事だと考える。
紆余曲折を経て、苦闘の末カールたちはミレーデまでたどり着けるのか。

誘拐したミレーデをモニターで見ている犯人の、変質的な狂った憎悪は次第に増幅していく。
話は現代の「Q」の捜査と「与圧室にいて1年毎に上がる気圧に耐えている彼女」とを交互に、壮絶な5年間をたどっていく。

読みはじめで、なぜか今回は勝手に組み立てた犯人像に、だんだん近づいていった。
サイコ・ミステリというか薄気味悪いところもある。
向こう見ずなカールは死ぬことは無気力よりマシ。と犯人に向かって突っ込んでいく、最後にはアサドもあきれながら同行して、いささかのハードボイルドも入る。
解決後は感動的で、ホロリとする。不屈のミレーデがいい。北欧のミステリは評判どおり真面目で面白い。
ドラマ化されたというので、DVDで観てみた。あらそうなのか、風景や登場人物の実像(まぁ俳優だが^^)は頭に入った。これからのシリーズも楽しみだ。


お気に入り度:★★★★☆
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