長官官房で総務課長、身分は警視正なので多岐に亘る職務に忙殺されている。
過去に埼玉で、暴力団員が射殺されたが、よくある暴力団員同志の揉め事だということだった。だが殺されたのは過去に起きた女子高校生の、誘拐、監禁、凌辱、殺人事件の犯人グループのひとりだった。
社会的に反響の大きな事件だったので、被害者の過去は伏せて、内外に箝口令をしいていた。
その事件が頭から消えかかっていた頃、埼玉市内でまた、射殺事件が起きた。
過去の事件との関係がクローズアップしてくる。
ところがまた三人目になる、過去の少年仲間が撲殺された。
被疑者は現職の警察官だという。これが知れると日本の警察機構の汚点になる。
解決方法を求めつつ、固く隠蔽されて捜査が進む。
一方、竜崎の家庭でも問題が起きていた。息子がヘロインの粉をタバコの先につけて吸っていた。粉も見つかった。さすがの竜崎も解決に迷う。
少年法が適用される年齢である、しかし身内の犯罪の責任を取らなければならない。
一直線に目指して耐えて来た今までの努力と、手に入れた地位をなくすだろう、そうなれば家族の将来が不安になる。
軽微な少年犯罪だから、簡単に揉み消せる、と同期で小学校からの敵のような友人が言う。
その友人は伊丹という。小学生の頃いじめられたことを竜崎は忘れられず、そのことをバネにしてきた。磊落そうに見えマスコミ受けのいい伊丹は、有名私大卒ながら今では、キャリアの、刑事部長になっている。
伊丹は事件についてなんとか内部で収めたいと言う。
同じように、息子の件ももみ消せと言うが・・・。
龍崎の本質、見識は組織の中では孤立することもあり、ときには周りの人たちを圧倒する。
反感や非難もまるで眼中に無い。公務員の心得、守るべき国民に対しての責任のみが彼の生き方である、それらはじわじわと周りに染み込んで行く。
管理社会の中で縛られているサラリーマンにとってこういう正論に沿った生き方は憧れである。憧れるだけである。建前もなく本音だけで通るのはまぁこの人くらいだろう。
現実では生きていけないなぁと思う。理解されるような事件も人間も見つからないのが実情だ。だからこの話は面白い。
そして、独特のキャリアとノンキャリアの厚い壁の前では、竜崎のいう、受験勉強以外の楽しみを犠牲にしてでも手に入れるべき道順は、まず東大に受かること。それもありなのか。
しかし、彼はそれだけではない何かを感じることのできる柔らかい部分が、少しずつみえてくる。そこがいい。面白い。