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大いなる遺産

大いなる遺産 映画

大いなる遺産

「Great Expectations」 (1997年 米)

監督:アルフオンソ・キュアロン
製作:アート・リンソン
脚本:ミッチ・グレーザー
原作:チャールズ・ディケンズ
撮影:エマヌエル・ルベズキ
出演:イーサン・ホーク(フィネガン/フィン)グウィネス・パルトロウ (エステラ)アン・バンクロフト (ディンズムア )ロバート・デ・ニーロ ( ラスティグ/囚人)ミンテリ、「カジノ」のケヴィン・ポ

デッケンズの名作。
本も読んだが中学生の頃ですっかり忘れてしまっていたし、前に見た名作といわれた映画も覚えていなかった。ディケンズでは「ニ都物語」が一番心に残っている。
この「大いなる遺産」も読んだときのワクワクした気持ちだけ覚えていて、TVのスポットで見てコレは見ないといけないと思っていた。映画館では見ることが出来なかったのをやっとDVDで見つけた。


フィンは姉とそのボーイフレンドのジョーと共にフロリダで暮らしていた。

海辺で好きな絵を描く平和な生活だったが、ある日脱獄し足に鎖をつけたままの囚人に襲われる。
フィンは家から持ち出したカッターで鎖を切り、手当てをし食べ物を与えて逃げる手助けをした。
ある日ジョーについて風変わりだという噂のディンズムア邸に行く。
そこで荒れた屋敷に似つかわしくない美しい少女のエステラを見かける。
ディンズムア夫人は過去に縛られそのままに年取った変わり者だった。
だがエステラの遊び相手になるように誘われ週一回屋敷に行くことになる。
初めての夢のような時間だったが、成長していくと共にエステラを恋するようになる。
だが育ちの違うエステラに憧れるものの彼は近づくことが出来なかった。そして
突然エステラはパリに旅立ってしまった。フィンは傷つきその後は屋敷にも行かず
好きな絵も描かず、海に出てはジョーを手伝っていた。

7年後、ニューヨークから突然弁護士がきて、彼の絵に援助者がついて個展を開く手伝いをするという。
そこで決心したフィンはニューヨークで描き始めた。そしてエステラと再会する。
突然エステラがきて彼の前で服を脱ぎモデルになるという。
フィンは彼女をモデルに、夢中で多くの絵を描いたのだが彼女には婚約者がいた。
今も思いを残すフィンの心は、婚約者ウォルターから奪うように乗ったタクシーの中でも、育ちの違いを話すエステラには届かなかった。

フィンの個展は大成功に終わり豊かな生活が送れるようになる、次第にそんな暮らしも身についてきたが、エステラは結婚し、彼は得たもの総てが空しく感じられるようになる。
豪華なアトリエに住むフィンの元に白髪で髯を蓄えた老人が訪ねてくる。
彼こそ子供の頃に出会った囚人のラスティグだった、彼はただ一度だけ受けた
少年の親切を忘れることが出来なかった。
逃亡を続けてはいたが生涯で得た財産をフインの才能に捧げたのだった。追っ手に刺されたラスティグは逃がそうとした。
フィンの腕の中で死んでいった。フィンはその後パリでも成功し、故郷に帰ってみたくなる。
懐かしさのために立ち寄ったディンズムア邸には小さな娘と一緒にエステラが住んでいた。


という現代風にアレンジされた「大いなる遺産」は
ロンドンの古い香りはすっかり消えて若いフィンとエステラのラブストーリーになっていた。
イーサン・ホークは身分違いの娘に恋する若者らしく繊細で初めはおどおどと近づき、
成功して少しずつ自信を持っていく成長の過程をうまく演じている。
グウィネス・パルトロウは男性を信じないでといい聞かされて育てられた娘らしく、
フィンを翻弄しながらもどこか純な気持ちに揺らぐ危うげな雰囲気がいい。
衣装も背景も緑の幻想的な色彩が美しい。
この部分は古典文学の味が少し残っているが、ディッケンズの文学を借りた別物の映画だという印象を受ける。
個性的な俳優と流れるようなストーリーも良くマッチしている。
荒れているディンズムア邸と最初は怪奇な印象で現れる夫人や部屋のインテリアには凝り過ぎの感もあるし、多少の違和感もある。
お手軽に済ましたような終わり方も少し浅い。だが二人が結ばれるアトリエでのラブシーンも品良く美しく撮れていて、
フィンの描いたデッサンや作品もなかなかのもので一見の価値がある。だからコレもありかなと思えるいい作品だ。