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ミリオンダラー・ベイビー

ミリオンダラーベイビー 映画

ミリオンダラー・ベイビー

MILLION DOLLAR BABY」 (2004年 米)
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ポール・ハギス 
音楽:クリント・イーストウッド 
製作総指揮:ロバート・ロレンツ、ゲイリー・ルチェッシ 
出演:クリント・イーストウッド(フランキー) ヒラリー・スワンク(マギー) モーガン・フリーマン(スクラップ) ミンテリ 「カジノ」のケヴィン・ポ



人の話を半分しか聞かないのが大きな欠点なので、ポスターやCMで見ていても、
この映画は富豪の捨て子をボクサーが育てる話かと思っていた、コレ本気で。
ふざけた前置きから入ったが、名作といわれるのにふさわしい心に残るいい映画だった。


富豪の捨て子ではなかったが極貧の家庭で育った女性(マギー)がボクシングで成功するのを夢見て弟子入りする。
場末の小さなジムを経営しているフランキーは元ボクシングチャンピオンで優秀なトレーナーだった。
アイルランド系アメリカ人の彼は敬虔なクリスチャンだったが、教会の神父からはあまり歓迎されてない。
その上娘とは絶縁状態で出した手紙も読まれずに返送されてきている。
一方弟子を思うあまり、見込みのある選手をすぐにはチャンピオン戦に出さず、優秀なボクサーは彼の元から去っていった。
彼女に対しては女性ということもあって毒舌を吐き、指導することを頑固に拒んでいたが、
熱心に練習に通うこととスクラップの陰からの勧めもあってやっとその気になる。次第に素質を認め、彼女の純で一途な人柄にも惹かれて厳しいトレーニングを始める。やがて試合に出るまでになった時、もうトレーナーではなくマネージャーの出番だと言い、いったんは身を引くのだが、見守らないではいられずついにマネージャーも引き受けてしまう。
彼女は生来の才能と練習で得た強烈なパンチで連勝を続け、人気も上がり、試合の申し込みも増えてくる。
いつまでも避けていられないチャンピオン戦だった、マギーの夢でもありファイトマネーの
100万ドルで過酷な生活から彼女を解放したいとフランキーも思い引き受けてしまう。
対戦相手は勝つことに手段を選ばないアフリカ女性だった。戦いを有利に進めていたマギーは引き上げるために背を向けた瞬間に相手のパンチを受けて倒れてしまう。
そこはコーナー近くですでにイスが置かれてあった。
倒れただけでなく、イスの角にクビがぶつかり頚骨を折ってしまう。
命だけは取り留めたが頭だけしか動かない重症で将来寝たままの生活になると診断が下る。
そしてフランキーとマギーの苦しい戦いが始まる。マギーはもう十分に生きたと思っていた、
しかし動かない体で死を選ぶことも出来ない、彼女は厳しい選択をする。


地味な映画でテーマもありそうなもので、目新しくはない。でも心を打つ。
マギーのヒラリー・スワンクを見た途端、ボーイズ・ドント・クライを思い出した。
性同一障害に苦しむ女性を演じた人だ。中性的で不思議な魅力がある。
モーガン・フリーマンも深みがある。
クリント・イーストウッドは年をとった、若々しい「ローハイド」から見続けていた彼が
こんな年になってしまったと自分を振り返ってみる。
枯れたような体がそのまま平安から見放された環境にぴったりに見える。
彼の監督作品はいい映画だと安心して見ることが出来る。
リング上の戦いも要領よくまとめ、後半、人間の尊厳を扱った重いテーマに時間を割いている。
ベッドに寝たままで顔だけで静かに哀願するマギーの表情も、それを見守るフランクの心の痛みも胸に迫る。
スクラップに対する深い悔恨、家族に対しての思い、頑固者の胸のうちには口に出さない人生の出来事が深く沈んでいる。
マギーは家族を思いやって自分を賭けたことに後悔はない、怠け者で卑怯な家族であったことが悲しみを誘う。

クリント・イーストウッド75歳、まだ最後の名作だと言って欲しくない。

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