「A PERFECT MURDER」 (1998年 米)
監督:アンドリュー・デイヴィス
脚本:パトリック・スミス・ケリー
出演:マイケル・ダグラス(スティーブン) グィネス・バルトロウ(エミリー) ヴィゴ・モーテンセン(デイヴィッド) デヴィッド・スーシェ(モハメド・カラハン)
ヒッチコックの「ダイアルMを廻せ」のリメイク版。昔見たような気がするが
きれいさっぱり忘れてしまっていたのでとても面白かった。
廃屋のようなビルのロフトが、エミリーの不倫相手デイヴィッドが絵を描いているアトリエで、
雑然とした中に大きなベッドがありあちこちに絵が散らばっている。
現代的でオープニングにピッタリ。
エミリーは資産家の娘で夫も事業で成功して豪華なペントハウスを構えているが、
夫は今積み重ねてきた不正な取引が行き詰まり、破産寸前で早急に莫大な金額を用意しなくてはならなくなっている。
そこで妻の遺産を狙って殺害計画を立てる。
不倫相手(デイヴィット)に犯罪歴があることを調べだして追い詰めて妻を殺させることにする。
殺害時刻に出先から妻に電話をいれ、妻がバスルームから電話に出た所を、撲殺させる。
この完全犯罪を狙った妻殺しをデイヴィッドは引き受ける。
そして当夜忍び込んだ犯人は、スティーブンからの電話に出たエミリーを襲う。
マイケル・ダグラスの笑わない目が怖い。
グィネス・バルトロウは真相に迫りかけているのに夫の巧みな嘘にだまされるような育ちのいい妻だが、命がけで抵抗して危機を脱するところなど、シガニー・ウィーヴァーほどでなくても女は強く、粘り強い。
「フレッシュ アンド ボーン」では、たちの悪いアメリカ娘を演じていたが「恋におちたシェークスピア」や「大いなる遺産」「リプリー」など品のいいお嬢さんになってきて美しい。
実生活では一児のある奥様になっようだが。
ヴィゴ・モーテンセンのデイヴィッドは、過去を調べ上げられ大金を積まれ「さあどうするの」と思えばあっさりエミリーを捨てて金をとった。
「ロード オブ ザ リング」のアラゴルンのイメージが変われば変わるものだ。
多少の未練があってもよさそうな二人の様子だっただけに。
彼は余分な肉を削いだ様な風貌なのでひ弱な落伍者めいて、心の底には何か暗いものがある、
犯人役にはうってつけ、でもよく見ると横顔はとても美しい人だ。
ストーリーは半ばまでは緊迫感もあり、デイヴィッドが殺人以外に逃げ道をなくしてしまうところを掴んでくる、悪の道にも通じたスティーブンの計画はよく出来ている。
でも重要なディヴィッドの最後が軽すぎる。刑事のデヴィッド・スーシェはお馴染みの「ポアロ」だったのに亡くなってしまってもう見られないのが寂しい。
もう少し言えば、鍵の隠し場所がわからないのはおかしい。
今なら捜査中にすぐに見つけるだろう。またガレージの開く時間に丁度犯人が居合わせるのも出来すぎのようで、まぁ偶然と言うこともあるし、となるとスティーブンがロフトに入ったとき偶然にも旅行社からの電話が入るのも出来すぎ。
刑事とエミリー外国語で話せるなら、スティーブン抜きでもっと面白い話の展開があってもいい。
紙袋に大金をいれてあんなに歩き回って破れないだろうかと余計な心配までしたが雨でなくて良かった。雨で袋が破れ金が散ってしまいでもしたら地上版「地下室のメロディー」だ。
最初にローストビーフを出し、尖った調理器具を念入りに写していたら何かあると思うでしょう。
途中であれを使うのかと気がついてしまった。さりげなく見せて欲しかった。
ただあんな器具は見たことがないが、確実に殺す計画ならぶら下がったフライパンで殴るより側にある包丁が取り易くていいでしょう。もみ合って押さえつけられているのだから。
最後は簡単に正当防衛なのね。あっけない幕切れだった。
でも色々言ってはみたが、細部までよく仕組まれたストーリーで次がどうなるか緊張感があって面白かった。